このカスリーン台風による死者は1,100人、傷者は2,420人にのぼりました。特に上流域の被害が大きく、群馬県の赤城山麓や栃木県の足利市においては土石流や河川の氾濫が多発。群馬県で592人、栃木県で352人の死者が出ています。
利根川流域全体では、家屋流出・倒壊は5,736戸、家屋の浸水は303,160戸、田畑の浸水は176,789ha など、甚大な被害をもたらしました。利根川の堤防被害としては、本川及び支派川で合わせて24か所、5.9kmの堤防が決壊。このうち渡良瀬遊水地周辺の堤防は、本川からの逆流と渡良瀬川の出水により水位が異常に上昇し、13か所で決壊しました。また、決壊には至らなかったものの堤防が崩壊した場所は、全部で10km以上になりました。 各河川の決壊により、道路や鉄道、農業にも深刻な被害が生じました。地域住民は生産基盤が失われ、様々な社会活動が困難になるなど被害は甚大なものでした。
都県名 | 家屋の浸水(戸) | 家屋流出・倒壊 | 家屋半壊 | 死者 | 傷者 | 田畑の浸水 | |
床上 | 床下 | (戸) | (戸) | (人) | (人) | (ha) | |
東京 | 72,945 | 15,485 | 56 | 8 | 138 | 2,349 | |
千葉 | 263 | 654 | 6 | 4 | 2,010 | ||
埼玉 | 44,610 | 34,334 | 1,118 | 2,116 | 86 | 1,394 | 66,524 |
群馬 | 31,091 | 39,938 | 1,936 | 1,948 | 592 | 315 | 62,300 |
茨城 | 10,482 | 7,716 | 209 | 75 | 58 | 23 | 19,204 |
栃木 | 45,642 | 2,417 | 3,500 | 352 | 550 | 24,402 | |
合計 | 303,160 | 5,736 | 7,645 | 1,100 | 2,420 | 176,789 |
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/bousai/river_bousai00000006.html
荒川では、9月15日午後7時30分、熊谷市久下地先において約100mにわたり堤防が決壊しました。
荒川から溢れ出た濁流は中小河川を次々と堤防決壊に追いやりながら元荒川沿いに南下し、17日には利根川の堤防決壊による濁流と合流して更に被害を拡大させました。
古来、利根川は太平洋ではなく、江戸湾(現在の東京湾)に注いでいました。現在のような流路となったのは、数次に渡る瀬替えの結果で、現在の利根川の骨格がつくられました。
この東遷事業の目的は、江戸を利根川の水害から守り、新田開発を推進すること、舟運を開いて東北と関東との交通・輸送体系を確立することなどに加えて、東北の雄、伊達政宗に対する防備の意味もあったといわれています。
カスリーン台風の洪水進行状況、浸水範囲をみると、洪水は昔の利根川に沿って、被害を拡大させたことがわかります。
アイオン台風【1948年(昭和23年)9月】
9月7日に発生したアイオン台風は、16日には東海道沖を経て房総半島に上陸。その後、三陸沖を東に進みました。アイオン台風は、時期や経路はカスリーン台風に似ていますが、中心気圧、風速はカスリーン台風を上回っていました。台風による破堤等の大被害はありませんでしたが、利根川本川筋及び渡良瀬川で床上829戸、床下浸水1523戸の被害をもたらしました。
キティ台風【1949年(昭和24年)9月】
8月28日に南鳥島の南東130kmの海上で台風となったキティ台風は、31日の夜に小田原市付近に上陸。その後、前橋市付近を通過して、柏崎市から日本海に抜けました。台風通過時から通過後にかけて関東地方の西部および北部山岳地帯に豪雨をもたらし、鬼怒川では上流域で600mmを超す豪雨をもたらしました。また、東京湾の西側を台風が北上したため、強い南風と満潮が重なり、東京湾では高潮が発生。江戸川河口付近では、海岸堤防と旧江戸川堤防が決壊し、大きな被害をもたらしました。
洞爺丸台風【1954年(昭和29年)9月】
函館港から出港した青函連絡船の洞爺丸が暴風と高波により転覆し、乗員乗客1,139名が死亡するなどの大惨事となりました。
狩野川台風 【1958年(昭和33年)9月】
秋雨前線を刺激して大雨を降らせ、伊豆半島中部を流れる狩野川は大氾濫となり、流域に甚大な被害をもたらしたため「狩野川台風」と名付けられました。また、神奈川県や東京都でも、市街地の浸水や造成地のがけ崩れなどにより、大きな被害が発生しました。
伊勢湾台風 【1959年(昭和34年)9月】
台風通過と満潮が重なった伊勢湾で観測史上最大の高潮が発生、名古屋市南部をはじめとする湾岸の低地内が浸水し、また前日からの大雨で木曽川などが洪水を起こしていたこともあり、空前の被害となりました。