多摩川
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多摩川で学ぶ、遊ぶ、参加する
多摩川リバーミュージアム
多摩川の見どころ
(TRM)多摩川フォトさんぽ
四季を通じて楽しめる自然に恵まれ、憩いの場ともなっている多摩川。
この風景を撮影するのは、「多摩川ファン」でもある2人のフォトグラファー。
彼らの思いがつまった温かい写真とエッセイを一緒に、多摩川へ出かけてみませんか。"春"
最初の一滴
最初の一滴
多摩川の最初の一滴を求めて笠取山(標高1953m)の水干(みずひ)に向かう。笠取山の山頂から少し下った南斜面に水干がある。そこに横たわる大きな花崗岩から最初の一滴がポタッ、ポタッと滴り落ちる。辛抱強く拳で最初の一滴を受けて待ち続けると水滴がたまる。口からそっと飲み干すと、冷たくて甘い香りが口の中に漂い、体の中を多摩川が流れる。多摩川の誕生のドラマに立ち会えた感動が体中を駆け巡る。新緑の陽光に照らされて真珠のような輝きを放つ幻想的な最初の一滴に出会えて幸せだった。
水干とは、沢の行き止まりを意味するが、全国に無数存在する沢の行き止まりの中で、何故ここだけにしかその呼び名はないのか、不思議である。水干までは、笠取山の登山口である作場平から、往復約6時間である。道は、東京都水道局のふれあいの道にもなっていてよく整備されている。
(撮影日:2000年6月18日/カメラ:ニコン/データ:絞り優先/撮影場所:甲州市一之瀬高橋 笠取山南懐)
万年橋上流
万年橋上流
橋の上流の新緑は、眩しいほどの輝きを放っていた。爽やかな風に新緑の香りが運ばれてくる。なんとも気持ちの良い一時であった。青梅市に架かる万年橋には、大きな歴史が刻まれている。大きな川は、下流に行くほど水量と川幅が増していく。水深が深くなると川を渡るにも渡れなくなる。大きな川は、県境や土地と土地の堺になり、人の往来にとって難所となっていた。江戸時代までは、どの橋も木や石を材料としてため、木は壊れや易く、石は使いにくいという欠点があり、川幅の大きい橋は、大洪水の度に繰り返し壊されてきた歴史がある。永久に架かる橋が欲しいとの願いを込めて、この万年橋は架けられたのであろう。 JR青梅駅から万年橋方面に向かうと、約20分でこの橋に着く。歴史と文化溢れる青梅の町を散策する際には、この橋によって欲しい。
(撮影日:2008年4月29日/カメラ:ニコンデジカメD70/データ:ISO100、18mm(35mm換算27mm相当)、1/90、F5/撮影場所:青梅市大柳町 万年橋上流)
"夏"
泉水谷清流
泉水谷清流
多摩川源流に鎮座する大菩薩嶺(標高2,057m)から流れ下る泉水谷小室川は、透明感溢れる清流である。本流の流れは、泉水谷といい、合流する支流が小室川である。大抵、谷が川に合流するが、ここは川が谷に合流する。この小室川は、多摩川源流でも屈指の清なる流れを今なお保っており、何度足を向けても飽きることはない。夏の「フォトさんぽ」には、一般には、近づくことの出来ないゾーンの写真も紹介する。それ故、撮影場所の詳しい説明は省略する。
JR奥多摩駅から青梅街道を甲府盆地に向かう。奥多摩湖を過ぎて丹波山村の町を抜けると約10分で丹波川と泉水谷との合流点に着く。合流点付近には、尾崎行雄の源流踏査記念碑が建立されているので分かり易い。
(撮影日:1995年7月6日/カメラ:アサヒペンタックス645/データ: 絞り優先 /撮影場所:丹波山村 泉水谷小室川)
府中の五本松
府中の五本松
自転車で走るスピードでは気がつかないが、ひとが歩く速度では自然と目に入ってくるもの。歴史ある松の向こう側には、工場と鉄塔が建っている。当たり前のような風景は、気づかないようにしている風景でもある。
(撮影日:2006年7月13日/カメラ:キャノン:EOS 5D/データ :EF16-35mm F2.8L USM、1/250秒、F7 /撮影場所:府中市四谷五丁目、府中多摩川かぜのみち)
牛枠(川倉水制)
牛枠(川倉水制)
河原に整然と並ぶ今にも動き出しそうな水制の群れ。雨が降ろうが振るまいが、ただひたすらその職務を全うし続ける。自然と向き合いながら知恵を絞り出した、祖先のひたむきさのように。
(撮影日:2007年8月15日/カメラ:キャノン:EOS 5D/データ: EF16-35mm F2.8L USM・1/40秒・F2.8 /撮影場所:東京都羽村市羽)
"秋"
石原地区水位基準
石原地区水位基準
多摩川原橋下流、石原水位観測所付近に並ぶ梯子のような水位基準のひとつ。台風後の崩れた水際に立つ錆び付いた姿には、人工建造物ながら遺跡のような風格があり、流域で暮らす人々の安全を守るという誇りも感じられる。
(撮影日: 2007年10月13日 /カメラ:キャノン:EOS 5D/データ: EF16-35mm F2.8L USM・1/250秒・F8 /撮影場所:東京都調布市多摩川三丁目)
御岳渓谷の秋
御岳渓谷の秋
御岳渓谷はカヌーのメッカである。この日も多くのカヌーイストが自らの技術を磨いていた。
御岳橋付近の紅葉は一段と見事で、多くの観光客が渓谷ぞいにつくられた散策路を楽しんでいた。
(撮影日:2006年11月26日/カメラ:ニコン:D200/データ:ISO100、22mm、1/30秒、F3.8/ 撮影場所:御岳渓谷御岳橋付近( 青梅線御岳駅から徒歩5分。))
"冬"
竜喰凍結
竜喰凍結
10年に一度か20年に一度、厳冬の季節だけ竜喰出会い滝全体が凍結する。水量の多い谷や滝が凍結するのはなかなか難しいらしい。生半可な寒さでは流れる滝が凍ることが出来ないからである。もし、全体が凍結した滝の姿を目撃できるなら、それはそれは貴重な体験である。この冬、竜喰出会い滝全体が凍結した。以来、こんな光景に出会えたことはないし、これからもないかも知れない。
奥多摩湖(小河内ダム)から国道411号線に沿って、甲府盆地方面に向かう。丹波山村を過ぎて15分くらい直進すると、甲州市のオイラン淵に着く。そこを過ぎて落合までの谷が、柳沢渓谷である。この渓谷に流れ落ちる沢には、いたるところに氷柱が顔を出す。もちろん、冬場は四駆でスタッドレスタイヤは欠かせない。凍結すると通行できないの要注意。
(撮影日:1995年2月2日/カメラ: ニコンF4 /データ:絞り優先/撮影場所:甲州市 一之瀬高橋 竜喰谷)
河口の葦原
河口の葦原
確かに河口は山に比べるとその装いに劇的な変化は無いかもしれないが、季の移ろいは確実にやってくる。澄んだ青空に映える葦原を見上げて何かを感じているのは人間だけではない。皆、春を待っているのである。
(撮影日: 2006年2月4日 /カメラ:キャノン:EOS 5D/データ:EF16-35mm F2.8L USM、1/250秒、F8/撮影場所:川崎市川崎区殿町三丁目、旧いすゞ自動車前)
河口干潟
河口干潟
砂に模様を描いては消し、描いては消し。干潟の大きなキャンバスは一時間後には水の底。そんな穏やかで厳しく、貧しくも豊かな場所でアサクサノリもひっそりと生き続けてきた。
(撮影日:2006年2月4日/カメラ:キャノン:EOS 5D/データ: EF16-35mm F2.8L USM、1/125秒、F5.6 /撮影場所:川崎市川崎区殿町三丁目、旧いすゞ自動車前)
フォトグラファープロフィール
■中村 文明(なかむら ぶんめい)
山梨県甲州市在住。多摩川源流研究所所長。
源流を隅から隅まで知り尽くした、知る人ぞ知る多摩川の源流名人です。人の分け入らぬ源流のあちこちを歩き、発見した圧倒的な自然をとらえた写真は有名です。著作に「多摩川源流絵図」ほか。
■ヤスモト ジュン
神奈川県川崎市出身。
大学在学中に水中写真家の潜水・撮影助手を務め、卒業後は歯科医師のかたわら、撮影助手や水中写真競技会に参加して世界の海を旅しました。