砂防と災害
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地域別災害情報
芦安村(現 南アルプス市芦安)・早川町
芦安村(現 南アルプス市芦安)・早川町
8月14日午前3時以降は、御勅使川による県道1000メートルの流失で、外部との通信連絡が断たれました。その後の調査によりますと7時40分ごろ、あっという間に巨大な水が津波のように押しよせ、家屋4戸流失したほか、野呂川林道警備派出所は危険となり、観測中の観測自記雨量計が、設置してあった岩石もろとも濁流に転落流失したということです。
芦安全村では死者・行方不明はなく、全壊流失家屋12戸でした。
8月13日よるから14日朝にかけて、この地方の道路は3百数十ヶ所にわたって土石流や崩壊などで隣接の各市町村との交通が断たれました。3日後の17日に強行脱出した一行80余名によって初めて惨状が判明したという状態でした。
西山では、14日8時ごろ急激に河川が増水し、さらに昼すぎに背後の湯川から土砂が押し出してきて、死者2名、全壊家屋17戸、流失家屋18戸の被害を出しました。また、出力1万5000キロワットの西山発電所の取水口、奈良田湖も、流木と土砂の押し出しで一時発電不能となり、早川入の東発電所第一、第二、第三、田代第一、第二、計5つの発電所(総出力7万キロワット)も3、4日間発電不能となりました。奈良田湖は昭和32年にできたばかりの人造湖でしたが、わずか2年で土砂に埋められてしまいました。奈良田湖の上流に工事関係者の飯場がありましたが、全て土砂に埋められました。
早川町の集落は、ほとんど河川から高いところにあり、早川氾濫による浸水被害はほとんど発生していませんが、側方侵食による道路などの崩落が相次ぎました。8月14日未明に大原野の中州集落で早川の側方侵食により家屋が流失したのをはじめ、10時には早栄橋~黒桂間で側方侵食により道路がごっそりと崩落してしまいました。
このほか、沢からの土砂の押し出しによる被害も多く発生しており、塩島の新宮川では橋梁が流されたほか民家が10戸あまりが土砂に埋没しました。
早川では消防団の判断によって避難指示が行われ、早川の増水や沢からの土砂の押し出しによる死者は西山以外では発生しませんでした。早川町住民には死者2名が出ていますが、これは住宅背後の崩壊によるものです。
早川町では各所で道路が寸断されてしまい、陸の孤島と化しました。西山温泉等では夏休みを利用しての宿泊客が大勢いましたが、3日後の17日から21日まで、及び25日に総計232人を自衛隊のヘリコプターにより救出しました。
早川町全体では死者2名(来訪者2名を除く)、全壊流出家屋36戸でした。
(1)黒桂地区 崩壊した県道奈良田波高島(停)線
※出典 山梨県土木部(1963)「昭和34年土木災害記録集」、又新社
(2)大原野地区 跡形もない橋と道
※出典 山梨県土木部(1963)「昭和34年土木災害記録集」、又新社
(3)西山発電所付近 早川入り県道被害状況
※出典 山梨県土木部(1963)「昭和34年土木災害記録集」、又新社
(4)新宮川付近 家屋の埋没
※出典 山梨県土木部(1963)「昭和34年土木災害記録集」、又新社