荒川の概要と歴史
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荒川放水路の変遷
4.荒川放水路が果たしてきた効果
洪水に対する荒川放水路の効果です。
時代とともに変化した荒川放水路の能力
荒川放水路は、昭和5年(1930)の完成以降、河川改修や流水による自然の力を受けて、河道の面積が増加しました。断面の増加によって、荒川放水路の洪水を流下させる能力は増強され、平成22年(2010)時点の能力は、昭和10年(1935)時点のおよそ2倍になっています。近年の洪水において昭和10年の能力を超えているものがあり、能力増強が実施されていなかった場合、氾濫する可能性がありました。
荒川放水路がなかったら ~昭和22年カスリーン台風~
これまでに荒川放水路が果たしてきた効果を改めて確認するために、「荒川放水路がなかったら」という仮想的な設定で氾濫シミュレーションを実施しました。
戦後最大と言われる昭和22年(1947)のカスリーン台風来襲時に、荒川放水路がなかったと想定した場合の氾濫シミュレーション結果は下図の通りです。隅田川沿川を中心に極めて広範囲の地域が浸水し、住民に甚大な被害をもたらすことに加え、日本の高度成長を支えた多くの工場が浸水したと考えられます。
荒川放水路がなかったとしたら、東京のまちの姿や日本の経済発展は、いまの状況とは大きく違っていたかもしれません。荒川放水路がなかったら ~平成19年9月台風~
次に、高度に発展した現在の首都圏において荒川放水路がない状況を想定し、大規模洪水による被害の発生状況を予測しました。
平成19年(2007)9月に首都圏を襲った台風9号の洪水時に、荒川放水路がなかったと想定した場合のシミュレーション結果は下図の通りです。浸水域は広い範囲に及び、鉄道や主要駅も浸水することから、多数の避難民や帰宅困難者の発生が想定されます。この洪水による被害額は約14兆円と推定され、阪神・淡路大震災の被害額を上回り、東日本大震災に匹敵する損害が生じると考えられます。