【中学校の部・総評】
審査を進める中で感じたのは、「人が生き生きと写っている写真」は小学生のほうが勝っているかもしれないという感触でしたが、また、特に今年はそういう写真が豊作でしたので、そんなことも感じたのかなとは思ったのですが、いざ、上位の作品を選んでみると、どっこい、総体としては、負けず劣らず、やはり小学生では撮れないような作品を中学生は撮っているなぁ~、と強く感じることになって、さすがと思いました。
それは、人間が成長とともに貯えることのできる、世界に存在する新しい美しさや面白さ、それらへの共感や発見、そういったものの数々と、経験に育まれた、写真の画面を構成する思考や力があるからなのではないかなと思いました。今年はそのような点で、クオリティの高い作品が集まったように思います。来年も是非この調子で行きましょう。
審査員 島田 聡
受賞コメント
早起きしてスタンドアップ・パドル・ボートに出かけた多摩川は、霧の凛とした
空気と朝日にきらきらと輝き、マイナスイオンに包まれていました。
審査員(島田先生)コメント
最初にこの作品を見た時、画面の色合いがとても不思議で魅力的だったので、検分するように見入ってしまいました。早朝の陽射しの陰になって神秘的な青色に染まる山肌と水面、対してその陽射しに輝く対岸の緑と淡い黄金色のまぶしい光、普通なら浮いてしまいそうな人工的な色なのに、印象的で鮮やかなそれら自然の色に馴染み、そして主張するカヌーのオレンジ色や赤とウェアのブルー、どうして、この瞬間、この色たちと光が揃ったのか…。写真の一番の強みであり、そして弱みでもあるのは、その現場に居ないと撮れない、ということなのですが、この写真はその強みが遺憾なく作者に味方していて、もし、いるとすれば、写真の神様が撮らせてくれた一枚といっても過言ではないように思います。
受賞コメント
山梨県河口湖の自然豊かな綺麗な眺め、綺麗な空気、
大好きな人と一緒に居る空間は自然と笑顔にしてくれる♪ だから素直に伝えたい…元気をありがとう!
審査員(島田先生)コメント
人間、人、家族、健康、爽やかさ、清々しさ、そういったキーワードが似合ってきそうな、まるで、何かの、どこかのコマーシャルのビジュアルになりそうな作品です。作者は中学一年生の男子、そのコメントに「大好きな人と一緒に居る空間は自然と笑顔にしてくれる♪」とありますが、この二人はご両親なのでしょうか…機会があったら、是非教えてもらいたいと思います。オーバー気味の露出が主題の明るさにマッチしていて、二人の白い服も明るさや清潔感を醸し出しています。画面の上方面の木々の梢の入れ方や分量もちょうど良いですし、人の位置や邪魔になりそうな看板の位置など、構図の取り方もとても収まりが良いと思います。
受賞コメント
この度は銀賞に選んで頂き、誠にありがとうございます。
この写真は、朝雨の降る日川に霧が舞う幻想的な写真を撮影したものです。また、湖のように見えますが、これは、大雨で砂防ダムに水が溜まってできたもです。砂防ダムの大切も知ることができました。
中学生部門最後の年で、このような賞がとれてとてもうれしいです。今回の賞を励みに、今後も写真を撮っていきたいと思います。
審査員(島田先生)コメント
まるで東山魁夷の絵画を思わせる、味わい深く幻想的な日本画のような作品ですね。青と緑が霧の中で溶け合い、大雨で湖のようになった砂防ダムの水面に映り込んだ景色は、どこからどこまでが、水面なのか、映った景色なのか、実際の景色なのか判然とせず、その不思議で魅力的な様子は観る者をひとときの美しい幻影へと誘ってくれます。静寂と美とで構成された画面は、確かな構図と相まって、作者の大人びた感性を物語っています。技術方面に目を奪われることなく、素直な感動をベースに、表現に磨きをかけていってください。きっと、また傑作をものにできることでしょう。
受賞コメント
この写真は、早朝の多摩川の河川敷で撮影しました。都心へと向かう人々が乗って
いる電車と朝日が重なった瞬間が、一日の始まりを感じさせるようでとても印象的で
した。
審査員(島田先生)コメント
タイトルを見て初めて知ることになったのですが、夕方ではなくて早朝、日の出の頃の風景だったのですね。夕陽と電車の風景となると、ロマンチックな雰囲気やファンタジックな趣を感じることも多いのですが、作者のコメントには「…都心へと向かう人々が乗っている電車と朝日が重なった瞬間が、一日の始まりを感じさせるようでとても印象的でした」と書かれていて、前向きで清々しく健やかな、世界に向き合うその感性に心が洗われる思いでした。感動のベースに社会への関心があることや、しっかりとした構図、電車と重なった瞬間を捉えた印象的な日の出の光は、中学生ならではの素晴らしい作品です。
受賞コメント
夏休みに、勉強の息抜きで、以前家族とキャンプに行ったことのある山梨県の瑞牆山に行きました。そこで川遊びをしていると、双子の弟たちがいきなり、素潜り対決を始めました。その様子が面白かったので、思わず撮った1枚です。
審査員(島田先生)コメント
タイトルはダブルミーニングなのでしょうか、「自然」と「仲良し双子」とも読めるし、「自然と仲良し」な「双子」とも読めるし…なぜなら、写真にはその両方の意味がしっかりと写っているからです。さすがに背中からだけでは双子とまでは分かりませんが、でも、くっついてほぼ一体化している二人が仲良しそうなのは、とても伝わってきますし、さらに、背景の川にも、二人の黒い頭やパンツの色のような黒っぽい岩や、肌の色にそっくりな岩や岸辺があったりして、川=自然とも二人は一体化しているように見えるからです。とても面白い、目の付け所の良い写真だと思います。
受賞コメント
綺麗な池をカメラ越しにのぞくと、横向きの顔の形の雲が池に映って見えたのでシャッターをきりました。丁度、鼻のところに太陽が光り、とても不思議な写真になりました。
審査員(島田先生)コメント
色や形、絵画的な抽象性に主眼を置いたデザイン的な作品なのかな、と最初は思ったのですが、タイトルと作者のコメントを読むと、そういうことよりも、美しさに誘われて、ふとファインダー越しに眺めた池に映った雲が、横顔に見えてきて、それで、それを「雲の神」と命名したのですね。言われてみると、怒っているようにも見える大きく開けられた口や、尖った鼻、鋭い眼など、神様に相応しい威厳を感じます。鼻の先端が光っているのも神々しさ増量ですね。デザイン的、絵画的な面白さと、物語的な楽しみを味わえる、素直でセンスの良い作品です。
受賞コメント
この度はありがとうございました。
表彰式楽しみにしています!!!
この写真が役に立てばいいと思います。
よろしくお願いします。
審査員(島田先生)コメント
夏の日の夕方、誰もが時々自分の暮らす街で出逢うけど、でも、かけがえなく美しい普段着の風景ですよね。空色と茜色が混じり始めた夕暮れの空がなんともきれいです。お決まりの風景写真では嫌われたり、避けたりされてしまう、人間の造ったコンクリートの橋や造作物もこの写真には必要です。なぜなら、それが「私」の暮らす世界であり、その暮らしに役立っているものだからです。作者のコメントに「この写真が役立てばいいと思います」とありましたが、なにげない感動を伝えるこの作品も立派に役立っていると思います。
受賞コメント
大好きな友達と大好きな桃沢川。
川の写真コンクールがあるとわかった時、私が住む長泉町に流れる奇麗な川「桃沢川」の事がすぐ頭に思い浮かびました。
大勢の人に長泉の素晴らしさが伝わればとても嬉しく思います。
審査員(島田先生)コメント
本当に雨が降っている訳ではないのだと思いますが、上から降り注ぐ水しぶきを、まるで雨のように捉えて表現したところがなかなか憎い作品です。タイトルの「雨ふる入り江」という文学的な感性もそれを助けてくれていて、思わず微笑みたくなります。こういう状況や場所でポーズを取る面白系、おふざけ系の作品はよく見るのですが、この作品の踊りの振付のような優雅なポーズを見ることはまずありません。身近な川と身近な友人への愛情を感じる素敵な一枚です。
受賞コメント
最初はしっかり撮れているか心配だったけど、見てみるといい写真が撮れていたので
よかったです。そして、この写真で賞がとれてうれしかったです。
審査員(島田先生)コメント
「撮れているかどうか心配だったけど…」とコメントにありましたが、写真がうまく撮れただけでなく、魚も賞もとれてしまいましたね。作者も川の中に入って、ここで待ち構えていたのでしょうか…竿を掲げてまさに釣り上げようとする瞬間の釣り人も写っているし、それからもっとタイミングの難しいというか、狙って撮れるものとは思えない、水面から出てきたばかりの魚の姿と釣り糸まで写っているし、偶然も味方してくれたのでしょうが、すごい写真です。次回も是非、魚も写真も大漁を狙ってください。