【小学校の部・総評】
今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で例年よりも応募作品が少なくなってしまったとのこと、どういう様子になるのか、かなり案じてしまいましたが、その心配は全く無かったようで、杞憂に終わりました。それは、このような状況下でも「出そう」という意気込みがある人が出してきてくれたからなのではないかと感じています。宿題で「仕方なく」出してきたのかな、というような作品が今年は少なく、むしろ「撮りたくて撮った」というのがまっすぐ伝わってくる、元気のいい、活きのいい写真が多かったからです。
例年の作品で言うと、夏休みに川で遊んでいる作品などは、応募が多いものなのですが、きっと人を写しているのではないかな、と思われるものでも、肝心のその人が遠目で小さく、何をしているのかわからなかったり、表情がよく見えなかったりして、勿体無いなぁ…と感じることも多いのですよね。そんな理由で「生き生きとした人の写真を」と、毎年の総評で書くことも多かったのですが、そういう観点からすると、今年は、その生き生きとした作品が多かったのがとても良かったと思います。来年の応募にも是非つなげて欲しいと思います。
審査員 島田 聡
受賞コメント
川の段差で遊んでいる妹をモデルにした写真です。「プァー」と言っている所を綺麗に撮影できました。カメラが防水だったので、色々な場所を撮影出来ました。
「川カシャ」のおかげで、写真が好きになれました。
審査員(島田先生)コメント
毎年、中高生を中心に、どちらかというとギャグ的な面白さを狙った、こういう作品の応募がよくあるのですが、そういった変化球ではなく、ストレートに感動を伝えてくれる点と、迫力あるダイナミックな画面構成という点で、頭ひとつ以上抜きんでた素晴らしい作品です。撮影者にも水しぶきがふんだんにかかってきそうな撮影条件の良くない位置まで、ずんずんと被写体に迫り、まさに修行と呼ぶに相応しい一途で真剣な姿と表情をしっかりとアップで捉えたこと、そしてその位置まで迫ることで、迫力ある水しぶきが画面一杯に表現できたこと、この二つがこの作品に大きな成功をもたらしています。修行の苦しみを経た後には、新しく生まれ変われるような結末さえ感じさせる、宗教的な趣まで醸し出している傑作です。
受賞コメント
お家の近くの公園の中にある川で、夏休みに水遊びをしました。
スイカを食べる妹がとてもニコニコしていたので写真をとりました。このあと僕もスイカを食べました。次は金賞をとりたいです。
審査員(島田先生)コメント
1年生の作品とは、とても嬉しい驚きでした。可愛い妹の笑顔にインスパイアされた素直な感動のなせる技でしょうか。人の姿と表情、美しい光と色…写真という媒体が持つシンプルな魅力をあらためて教えてくれる見事な作品です。望遠レンズを使っているのでしょうか、逆光気味の光そのものも美しいのですが、その光に映える子どもたちの笑顔、産毛の名残を感じさせるような、輝くふわふわの髪の毛、両手で可愛らしくつかまれた、見るからに美味しそうなスイカの赤い色、背景の緑、どれもが美しく、そして温かい父子の会話が聞こえてくるようです。何気ないひとときの愛おしさを感じさせて止まない、なんと素敵な一枚でしょう。もう一歩踏み込み、画面を横にすると、人がもっと大きく写って更に素晴らしい作品になったと思います。
受賞コメント
娘は応募してから結果の通知がいつ来るのかいつ来るのかと毎日心待ちにしておりました。
うれしい結果に夏の思い出が一段と輝きを増しました!家族みんなで喜んでいます♪
審査員(島田先生)コメント
カニを見上げる人の顔は口から下が見切れている、水槽を持つ手もちらっとしか写っていない…でも、カニと心配そうにそのカニを見つめる眼は、大きくしっかりと写っている。そうなのです、減点がいくつもあるように見えながら、実は作者の伝えたい大事なものだけにフォーカスした訴求力の強い満点以上の作品なのです。結果として、とても大胆な構図が生まれることになり、その点もこの作品の魅力と力強さにつながっています。作画や構図といったテクニックの覚えも生まれてくる、中高生なら意図的にこういう大胆な構図を狙ってくることもありますが、シンプルで優しいタイトルにも現れているように、テクニック以前に、小学生の作者は「何を写したいのか」直感的に把握できている、それゆえの傑作だろうと思います。写真にとって一番大事なこの気持ちを、これからも大事に育てて欲しいと思います。
受賞コメント
どこにも行けなかった夏休み。初めて行った宮ケ瀬湖で、橋の上から見た水面がきれいだったので、撮影しました。
審査員(島田先生)コメント
高校生の応募作品などでは見かけることも、また優秀な作品に出逢えることもある絵画的、造形的な作品なのですが、小学生でこの発想が出てくるというのは、作者のコメントにもあるように、素直な感動の成せる技なのでしょうね。『グラデーション』というタイトルにしっかりと意識されているように、エメラルドグリーンの水面、水内際の淡い色彩、そして砂浜の白へと織物のように変化していく色合いが、とてもきれいで、よくぞここだけを切り取ったな、と感心させてくれます。水面の緑8割、浜の白2割という色の配分、バランスもとても心地良く洗練されています。小さいプリントで見ていると分かりにくいのですが、展示の際に大きなプリントで見ると、水面や砂浜の細かいディテールがよく見えてきて、これらもきっとこの写真の魅力になることと思います。
受賞コメント
ぼくはおとこ3人きょうだいのちょうなんです。
パパとおとうととちかくの川がきれいなので、あつい日に川あそびに
つれてってもらいます。
審査員(島田先生)コメント
男の子三人兄弟のお兄ちゃんが撮った写真だそうですが、やんちゃそうな末っ子、しっかり者風の次男、それぞれの目線の方向が微妙に違うのも面白いのですが、その二人の性格が表れているようで、微笑ましい一枚ですね。シャッターを切った後には、きっと男の子三人兄弟、パンツ一丁で、やんちゃ、はちゃめちゃ、むちゃくちゃをして、お母さんをはらはらドキドキ、そして微笑ませてくれて…きっと、お母さんは、男の子三人を授かった幸せを感じることになったのではないでしょうか…などと想像させられてしまうような幸せな一枚です。
受賞コメント
入賞はとてもうれしいです。川が多い江戸川区の一番好きな川の
うつくしさを写真を通じて伝えたかったです。
審査員(島田先生)コメント
日々の生活や暮らしの中に馴染んだ身近な川の存在と、時間とともに変化するその風景は、朝な夕なにきっと人を惹きつけて止まないのでしょう。特に家路を辿る頃になるからなのでしょうか…夕景を写した作品は、毎年見かけることになりますが、作者の感情や気持ちが伝わる優れた作品が多く、この作品も同様の一枚と言えるでしょう。とっぷりと日が暮れる少し前の水色と茜色が混じり始めた空と水面の色合いが美しく、しみじみとさせてくれます。少女の銅像も画面のポイントになっていますが、川の行き先と奥行きが見えるように、ど真ん中から少しずらして配置されているのも良かったと思います。
受賞コメント
どうしょうにえらんでいただき、ありがとうございます。
かぞくと千ばこへいったとき こくちょうがゆっくりちかづいてきました。
とてもちかくにきてくれたのでうれしくなりました。
審査員(島田先生)コメント
画面の水平を気にせず、斜めに使うことで、画面一杯に黒鳥の姿を写した、とてもインパクトのある作品ですね。きっと写す方も、写される方も興味津々だったのでしょう、お互いに近づくことで、タイトルの「にらめっこする?」というくらいの至近距離でシャッターを切ったのが大成功の要因です。近づくことで現れてきた、前にあるものほどより大きく写るという、広角レンズ的なデフォルメ感も面白いし、今にもつつかれそうな臨場感や赤いくちばしも印象的でとても迫力があります。…さて、にらめっこはどっちが勝ったのかな?
受賞コメント
去年は佳作だったけど、今年は銅賞がとれてすごくうれしいです。あまりの水の冷たさにママがさけんでいるいい顔がとれました。手前にすきとおった川の中もうつせてきれいでした。
審査員(島田先生)コメント
まるで少女にかえったかのようなママたちのキャーキャーという声が聞こえてくるくらいの、とても臨場感に溢れる作品ですね。子どものようにはしゃぐ大人たち=ママたちを見て、現役の子どもとしては共感せずにはいられない!そんな気持ちが、この一枚をものにさせたのでしょうか。逆光という悪条件だった様子ですが、この写真の肝、弾ける表情もなんとか写っています。こういう時にはストロボを使うと、もっとしっかりと表情が写ってくるので、一層臨場感のある一枚になったと思います。
受賞コメント
夏といえばキャンプ!キャンプといえば川!!というくらい川遊びが大好き!!!思い切りとび込んでいる弟を写真に撮りました。全力で楽しんでいる顔が大好きです。これからも一緒に川で遊びたいです。
審査員(島田先生)コメント
計算したのか、偶然なのか、よくぞこの画面の端っこの方に人物を入れ込みましたね!なぜなら、そうすることで、これからジャンプする向こうの奥行き、距離感、広がり、川の姿…それらのすべてが、画面のこの位置に人物がいるからこそ、伝わってくるものだからです。写っているのは弟だそうですが、その一所懸命、全力な表情と姿勢が存分に伝わってきます。よく見ると、足の先は川面にもう触れていて、実はそんなに高くジャンプしてはいなさそうに思えるのですが、そこがまた、まだ小さい弟のかわいらしさを感じさせてくれて微笑んでしまいます。