【高等学校の部・総評】
今年の高校生の部は、審査を始めてからのしばらくの間「ん?今年の高校生、大丈夫か?」と、少し前に選考を終えた小学生の作品か?とちょっと心配になったくらいだったのですが、審査を進めてみれば、高校生らしいレベルの作品も見られるようになって、一安心はしたものの、どんぐりの背比べ的な様子で、頭ひとつ抜きでた作品がありませんでした。
そういう意味では、金賞から銅賞まで紙一重の差しかありませんので、どの作品の作者も、さほど順位のことは気にせず、評価の高い部分を更に伸ばしたり、工夫したりして、是非、次のチャンスに臨んで欲しいと思います。
全体としては、デザイン性や視覚的な面白さを生かした作品や、自意識高めの青春を感じさせる心象的作品、後ろ姿や帰り道といった、前ではなく後ろという振り返る感覚にフォーカスした作品など、高校生ならではのセンスや感覚が魅力的な作品が上位に入ってきました。例年チラホラ見られた高校生らしいナンセンスな写真が今年は一枚も無かったのは、少し寂しかったかも知れません。そんなテイストの写真も含めて、来年の作品も楽しみに待っています。
審査員 島田 聡
受賞コメント
この度は金賞というたいへん素晴らしい賞を頂き、どうもありがとうございます。この写真は長崎市の眼鏡橋の下を流れる中島川で撮りました。川面に映る友人の影を撮ることによって、思い出の1シーンのようなイメージになり「水影メモリーズ」とタイトルを付けました。楽しかった最後の修学旅行。一生の思い出になりますように。
審査員(島田先生)コメント
影というものに注目したところは、とても良いとアイディアだったと思います。それもただの影ではない、揺れる水面に映る影は、絵画的な色彩やタッチを感じさせて、写真というものの面白さを教えてくれます。ただ、やはりまだ記念写真ではあるのが惜しいところです。誰かが落ちそうになる、滑る、ジャンプする子がいるなど、ここにハプニングやドラマの要素が加わると、写真ならではの意外性が前面に出てきて、この一枚しか無い!という作品が生まれたと思います。写真を楽しむ力のある共立女子高校写真部のみなさんの更なるパワーとアイディアの発揮を楽しみにしています。
受賞コメント
夏休み最後の日、両親に連れていてもらい、夏休みのかけらを見つけにいきました。日本一のもぐら駅や冷たく澄んだ川の流れ。今年の夏休みを締めくくるよい思い出になりました。
審査員(島田先生)コメント
ぼんやりとしか見えない川は、ここでは主題では無いようです。しかし、鴨長明から美空ひばりまで、古来、日本人は川とその流れに人生を重ねてきました。作者の感性もそこに反応したのでしょう。表情を窺い知ることのできない後ろ姿は、容易には知ることのできない他人の人生にも似て、女性の服装、髪型、ちらっと見える赤い眼鏡、薄汚れた駅舎の覆い、色模様と化した背景の川、これらと相まって、見る者の想像力をじんわりと刺激する作品です。
受賞コメント
この度は銀賞をいただきありがとうございます。この写真は先輩と撮影に行った帰りに撮影した写真で、風景がきれいだったので、撮影しました。電車と山を一緒に写せるように気を付けて撮りました。空の色が二色に分かれているので、個人的にも好きな写真です。また、来年も賞をとれるように頑張って撮影したいと思います。ありがとうございました。
審査員(島田先生)コメント
茜色に染まる空と雲、それを映して微かに色づく川の流れとその姿、素直な感動に導かれた夕景のなんと美しいことでしょう。遠く夕焼け雲の向こうに見えるのは、榛名、浅間の姿でしょうか。タイトルは「帰りの風景」、授業を終えて家路に着くと、こんな風景が手に入るとは、羨ましい限りです。自分の暮らす土地と日常への愛おしさが伝わってくる、共感と温かさに満ちた作品です。
受賞コメント
道端で宇宙人を見つけました。思わず拾い上げて古びた橋の欄干に置きました。挨拶をされているような気がして、そっと写真を撮りました。
審査員(島田先生)コメント
自然や風景の中に潜む本来の姿とは離れた形や色彩、模様、それらに鋭敏に反応した感性が生んだデザイン性に溢れた素敵な作品です。清流にかかる橋の欄干に舞い降りた虫食いの枯れ葉に宇宙人の顔を発見し、錆びたその欄干は赤が基調の色模様となり、やはり色模様と化した川の青と緑が、互いに引き立て合っています。発見の喜びと茶目っ気あるセンスが伝わる一枚です。
受賞コメント
小学生の時から参加しているコンクールです。8回目で初めて賞をいただき、嬉しいと同時に驚いてます。これからも環境を良くするように心掛けていきたいと思います。
審査員(島田先生)コメント
え?何なのこれ?どうなってるの?でも、緑と青がとてもきれい!そういう第一印象で見る者を惹きつける作品かと思います。とてもきれいな青は川の流れと水面と分かるけど、奥のきれいな緑は、白っぽい川岸も見えるようだし、向こう岸? 答えはタイトルにありました。敢えて主題はピントの外に置きぼかして謎めかす、写真のマジックとその面白さが遺憾なく発揮されています。
受賞コメント
この写真は、僕が生まれ育った町の川で撮りました。夏になると花火が打ち上がり、いくつのも夏をここで過ごしました。来年は花火を背に、また、矢切の渡しを背にして撮影したいなと思っています。
審査員(島田先生)コメント
川も空も建物も何もかも、全て茜色に染まった風景の中に佇む、ちょっと変わった姿の浄水場の施設?は、まるでメルヘンの世界に迷い込んでしまったかのような気持ちにさせる作品ですね。作者もそれを十二分に意識したのでしょう。「とんがり帽子とまる帽子」という擬人化されたタイトルにそれが表れています。現実と想像の世界を自由に行き来できる写真の魅力と、それを可能にした作者の感性を物語る一枚です。
受賞コメント
この度はとても立派な賞をいただき、どうもありがとうございます。この写真は、写真部の合宿で行った長野県白馬村で撮りました。真夏の炎天下でも流れているのは雪解け水なので、悲鳴をあげるほど冷たいです。私たちはここで写真を撮ったり水遊びをするのですが、その一方で源太郎砂防ダムは、長年水害から地域を守ってきた頼もしい存在です。治水の大切さ知りました。
審査員(島田先生)コメント
砂防ダムという堅固で力強い構造物、そして炎天下の真夏の日差しと太陽という、こちらも実に力ある対象に、真正面から立ち向かった、実に正々堂々とした気持ちの良い作品です。何か面白く撮ろうとか、一ひねりしようとか、そういう作為は無く、力あるものに立ち向かい、正対する姿勢は、若さの力強さもまた物語っていて、聞こえてきそうなダムの轟音と、じりじりと照りつける太陽の熱が、見る者にも力を与えてくれます。
受賞コメント
去年、この川の近くの祭りの花火を親しい友達と見ていました。でも今年は高校入学ということもあって遊べる機会が減り、一緒に花火を見ることができませんでした。そんな少し悲しさを込めてこの写真を撮りました。
審査員(島田先生)コメント
画面を支配しようとする怪しい紫色と、稲妻のようにも見える閃光や光の輝きは、普段の川の姿からはかけ離れていて、とても非現実的な魅力を醸し出しています。その心は…といえば「君がいた夏は…」というタイトルに思わず納得してしまいましたが、とてもポップでロマンチックな、ざわざわとした青春の心象風景だったのですね。タイトル名の一曲のジャケットにもなれそうですが、さて、歌うのは誰が良いのだろう。
受賞コメント
この度銅賞を受賞することができて大変うれしく思っています。この写真は、夏休みに家族で福岡に行ったとき、福岡タワーに登り撮影した1枚です。川と橋が1回交差し、その後どちらも平行にどこまでも続いていく光景がめずらしかったのでシャッターを切りました。今後も「これは!」という光景を探しながら写真を撮り続けていきたいです。本当にありがとうございました。
審査員(島田先生)コメント
旅行に出かけた時の写真でしょうか、展望台のような高い所から眺めた時に初めて気づく、地勢への素直な感動が伝わります。写真にとって物理的な視点を変えてみることは、驚きや感動への誘いとなりますが、この写真もそうですね。優雅にS字を描く高速道路、その下をくぐる橋、そして大きな川の流れ、街と建物の様子、広大な範囲を一望することで分かる、これらの有機的な関係と美しさが表現された作品です。