【中学校の部・総評】
今回中学生の部は、いつも多数を占める夏の川の風景写真に混じって、時々ハッと驚く写真に出会う事ができて、とても興味深かったです。とにかく、「今まで見た事のないような川の写真を撮ってやる!!」という気持ちになること、そうすれば、写真は変わります。素晴らしい写真は、タイトルも的確で、その写真のここを見てほしいというポイントが、とてもはっきりしているものです。それとユーモア、遊び心があって、写真の細部に引き寄せられるような魅力が存在しています。そして、写真を見ているうちにいろんなことを想像させてしまう引き出しを沢山備えた写真は、見る人の心の奥底にドラマを運んでくることさえあります。今回の選考では、たまたま同じ中学校から入賞者が集中しました。ひょっとしたら、みんなで刺激し合っていい写真が生まれたのかもしれませんね。
審査員 大西 成明
受賞コメント
あ!亀だ!と思いシャッターを押すと本物の亀ではなく、波の形でした。ですがその1枚は、水とは思えない神秘的な1枚と変わりました。
審査員(大西先生)コメント
何とも不思議な写真です。タイトルを知って初めて、作者が水面に亀らしきものの姿を見つけて撮った写真であることがわかります。でも本当に亀がいるのかどうかそれは謎のまま。でも、そういわれるとそんな気がしてくるから不思議です。この写真の最大の魅力は、見る人に想像力を働かせ、写真の世界に参加させてしまう吸引力があることです。水平線を大胆に傾けることで、亀が天に昇って行くような躍動感が生まれています。背景のビル群のボケ味が空気感を感じさせ、効果抜群。写真ならではの魅力全開の、見事な傑作です。
受賞コメント
川の流れの激しいようすを「すべり台」という言葉で表現しました。
審査員(大西先生)コメント
左上から右下へと、まるで滑り台を勢い良く滑って行くような心地よいスピード感にあふれた写真です。お友達がモデルでしょうか、何とも言えないポーズが、ハデな上下のウェアと相まってキマっています。特に右手の長い指がきれいです。同時に画面中央右上から延びてくる隣の子の指がとても効果的に画面に入っていて、奥行き感が感じられる痛快な一枚となっています。
受賞コメント
祖父母と行った新潟の旅行のときにとりました。日本三大峡谷の1つなので、実さい見たときは、とても迫力がありました。銀賞とれてよかったです!!
審査員(大西先生)コメント
六角柱状節理の岩肌がそびえる雄大かつ荘厳な峡谷美が、大迫力で見るものを圧倒します。最近はドローンで自然の奥深くに入り込んで、今まで見た事もないような秘境の風景を映像で見る機会が増えてきました。これは、清津峡渓谷トンネルの見晴し台のひとつパノラマステーションから撮影したものでしょうが、空の青さ、川の水の白波が、力強く立体的にみえる岩肌とともに、まさに「晴天の贈り物」とでも言うべき写真になりました。
受賞コメント
この写真は私の妹にモデルになってもらいとりました。手をこうして!もう少し右!とこまごまと動いてもらいながらとりました。静かな夜の川とすき間からあふれ出ているお祭りの明りのコントラストが気に入ってます。
審査員(大西先生)コメント
夏祭りのひとこま、なんとも艶っぽい写真です。この写真が成功しているのは、「近景・中景・遠景」のバランスが良く、それぞれに見所があることです。特に、浴衣の女性が佇む建物の枠組みが入ってきていることで、写真を見る側は、女性の目線を追体験しながら川の流れとその先を目で追うことになります。浴衣の香り(嗅覚)、川の水音(聴覚)も相まって、とても情緒豊かな写真です。
受賞コメント
夏休みに岩手県猊鼻渓で舟下りをしてたどり着いた先に広がっていた風景です。そびえ立つ大きな岩山とそれが映りこんだ水面、スケールの大きさに圧倒されました。そして木々の間から吹く涼しい風が印象的でした。
審査員(大西先生)コメント
日本百景のひとつ、北上川支流の砂鉄川が石灰岩を浸食してできた猊鼻渓を、力強く切り取っています。岩を見上げる人物を中央左に配置し、下半分に渓谷の岩を鏡像の如く絶妙に映し込ませて、風景のスケール感を圧倒的に膨らませるのに成功しています。川面がピタッと静止しないで、わずかの風に揺れているのが幻想性を高めています。写真を見ていると、つい行ってみたくなる誘い上手な一枚です。
受賞コメント
この写真は群馬県の川で水きりをしている時のものです。みんなでどれだけ回数を重ねられるか勝負した時の緊張している一瞬です。誰一人としてこちらを向いていない不思議な写真が撮れました。
審査員(大西先生)コメント
これは、先生と子供たちが一緒に夏休みで訪れたキャンプ地でのひとこまでしょうか。「一点集中」というタイトルが、いろんな想像を掻き立てて秀逸です。いったいみんなは何を見ているのでしょう? もう少しみんなの後ろに回り込んだ位置から撮ると、向こうに見えている光景の種明かしになるので、あえて「謎」を残したこの位置からの撮影が作者の狙いだったとしたら、胸騒ぎを覚える不思議写真として大成功です。
受賞コメント
晴れた8月のサイクリング中にふとハトが涼しさを求めて休んでいる姿と川の穏やかな流れを感じて撮った一枚です。
審査員(大西先生)コメント
太陽が当たっている白いコンクリート部分と、ちょうど日陰のために青くなった影の部分、そして川の水の部分と、画面が力強く三等分されています。実際に肉眼では、日陰の部分がこんなに青くは見えません。しかし、デジタル写真の画像は、より青く彩度がアップされているように見受けられます。ハトでしょうか、一直線に並んだ様子がユーモラスで、絵画的なアート作品を見ている気にさせられます。
受賞コメント
東京ドームへ行く時にいつもこの橋を渡ります。この日はたくさん人が通っているのに逃げないでここに鳥がいました。いつもは川に浮かんでいるを見ていたけどめずらしかったので記念に撮りました。
審査員(大西先生)コメント
まるで剥製のように橋にとまっている一羽のユリカモメ。作者はかなり近付いてシャッターを押しているようですが、よく飛び立たなかったですね。この鳥、実は「東京都民の鳥」で、日本の古典文学に登場する「都鳥」のことです。足とくちばしが赤いのが特徴で、捨てられた魚などをカラスと争うような、案外獰猛な鳥です。作者はきっと動物と気持ちを通い合わせる名人なのかもしれませんね。
受賞コメント
この写真は栃木県日光市にある湯ノ湖で撮りました。湯ノ湖にはたくさんのとんぼがいて指を出すとすぐにとまるので、湯ノ湖をバックに撮影しました。
審査員(大西先生)コメント
炎天下の真夏に訪れた湖で、指に止まったナツアカネのオスを撮ったものですね。まさに「赤トンボ」の名の通り、濃いオレンジ色の胴体がとても美しく捉えられています。右人差し指に止まっているのをすかさず左手でシャッターを切ったのでしょうか、ブレないで的確に撮る力量は素晴らしいです。背景の湖面と山並みのボケ具合が見事で、空気感の豊かな優れたネイチャーフォトです。