埼玉の道づくり
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上尾道路
江川地区の環境保全への取り組み
江川は鴻巣市、北本市、桶川市及び上尾市を流れる、延長約5kmの荒川に注ぐ一級河川です。
江川下流域は、湿地帯が広がり、豊かな自然環境が残されています。湿地とは
・湿地は、水域と陸域の間に位置する移行帯(「エコトーン」と呼ばれる。)であり、水域と陸域の両方の性質を持った多様な生き物や植物・樹林が生息・生育しています。
・湿地に生育する植物のうち2種類に1種類がレッドデータブック(※)に記載され、絶滅が危惧されています。
・湿地は、上記のほか、洪水調節(川の氾濫水を受け入れる)機能や、水質浄化機能など、地域の方々の安全な生活を守る役割を果たします。
※レッドデータブックとは、環境省が作成・改訂したレッドリスト(絶滅のおそれがある動植物のリスト)に基づき、より具体的な内容を記載したデータブックをいい、正式名称は『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック-』という。江川地区の湿地には数多くの希少植物が生育
上尾道路が江川と交差する江川地区の湿地には豊かな自然が残っており、絶滅が危惧される数多くの希少植物が生育しています。
【江川地区の湿地に生育する希少植物の一例】
ノウルシ
・黄色の花(4月に開花)
・川岸などの湿地に生える高さ30cm~40cmの多年草
・茎を切ると乳白色の汁が出て、ウルシと同じようにかぶれることから、この名がつけられた。
ハンゲショウ
・白色の花(7~8月に開花)
・水辺や湿地に生える高さ0.6m~1mの多年草
・夏至から11日目にあたる半夏至のころに花を開くことからこの名がつけられた。葉が白いので、半化粧と書く場合もある。
チョウジソウ
・白色の花(5~6月開花)
・川のそばなどやや湿った草地に生える高さ40~80cmの多年草
・花を横から見た形が漢字の「丁」の字に似ていることからチョウジソウ(丁字草)と名づけられた。江川流域では
急速に都市化が進展
高度経済成長期にあわせて、江川流域も宅地開発が行われ、工場が進出するなど、急速に都市化が進展しました。また、昭和60年頃から水田が格好の土捨て場となり、数メートルもの高さの盛土が行われたため水田が減少しました。自然保護団体や地元住民の方々の取り組み
このような状況を背景に、今から約30年前、自然保護団体と地元住民の方々によって自然を守る活動が始まり、これまで湿地性植物の生息環境保全のための外来植物駆除や草刈りなど地道な作業が行われてきました。大宮国道事務所の取り組み
環境保全対策の検討
江川地域周辺では、川と農業とが共生する里山と湿地の保全活動が行われ、平成14年10月には、埼玉県が中心となり、学識者、関係行政機関、地域代表及び自然保護団体により、「江川流域づくり推進協議会」が設置され、江川流域のあり方や沿川の環境保全について検討されました。
この中で、大宮国道事務所は平成17年3月に、「上尾道路の江川下流域周辺における環境保全の取組み(案)」を説明し、上尾道路における環境保全対策の方針を紹介しました。
これに基づき、上尾道路の江川地域における道路事業のあり方と環境保全対策の検討を進めるため、平成21年2月に「上尾道路(江川地区)環境保全対策検討会議」を設置し、平成24年6月に当該地区の環境保全対策をとりまとめました。
地元と一体となった活動
上尾道路(江川地区)環境保全対策検討会議でとりまとめられた環境保全対策を現地で実施するために地元住民、環境保護団体、学識経験者、自治体からなる「湿地保全プロジェクトチーム」を平成24年12月に発足し、湿地環境の保全・再生や、希少植物の保全・育成・管理などの活動を進めています。
湿地環境に配慮した施工
・工事による湿地環境への影響を低減するために、現場においてもさまざまな取り組みを行いました。
・地下水等への影響が懸念されたことから、地下水の水量・水質に関するモニタリングを実施しています。