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    伝統河川工法

    現在の万力林を見る

    差出の磯

    万力林は笛吹川が山間部から甲府盆地に出たところに鬱蒼と茂っています。万力林のような「林(はやし)」を水害防備林と呼びますが、万力林は我が国における代表的なものです。笛吹川も土砂の流出が多く急流なので昔から幾度となく流路を変えたようです。明治40年(1907)の洪水でも石和町の付近で流路が変わりました。

    万力林の現況を図一6で紹介します。万力林に代表される治水施設は水防の目的を持って育てた林と堤防、護岸、水制の構造物及び塔の山、獅子岩等の自然地物から構成されています。図一6を参照しながら説明を見て下さい。先ず堤防、護岸ですが1は上の堤防と護岸、2は下の堤防と護岸、3は寄石の低水護岸4は旧石積堤(雁行堤)です。天正11年(1583)の大洪水の直後に築造したのかも知れません。次に、ここの中心的な存在である林地ですが5の所にある赤松を主とした目通 しで幹周が60cm以上の樹木が約500本あります。6は林地と重なりますが遊水池として河川敷地が約13.5ha確保されています。7に霞堤の開口部が設けてあります。次ぎに出し水制と根固ですが8に差出の水制があります。これは構造としては亀甲出しに属するものです。9にはコンクリートブロックの根固が敷設してあります。自然地物としては10の塔の出とその先端の差出の懸崖、11の獅子岩(万力丘陵)があります。

    図-6

     この配置から治水の構想を分析すると先ず8の差出水制で洪水の主流を河道の中心へ刎ね、その洪水を1および2の堤防と護岸で下流へ安定的に流し、河床や堤脚の洗掘に対しては3の寄石の低水護岸や9のコンクリートブロックの根固でガードする。しかし万一にも堤防が決壊した時は赤松を主とした巨木の茂る水害防備林で濁流を受止め、流木や土砂が集落や田畑を襲って壊滅させるのをシャットアウトする。もし堤内に氾濫しても洪水は既に減勢されているので被害は最小に抑えられる。出来る事であれば洪水を一滴も堤内に氾濫させずに林地で食い止めて7の霞堤の開口部から速やかに笛吹川の河道へ戻すという治水のしくみです。

     万力林は、このような役目をもちながら現在も私たちが安心して暮らせるように譲っていてくれるのです。

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