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  • 資料:超過洪水及びその推進方策について

    (昭和62年3月25日 建設省河審発第10号)
    (建設大臣あて 河川審議会会長)

    河川審議会は、昭和61年9月29日付け建設省河治発第47号で諮問のあった「超過洪水対策及びその推進方策はいかにあるべきか」について別紙のとおり答申する。

    別紙

    我が国の河川は地形、気象条件等の自然的要因から洪水が発生しやすい特性を有しているうえに、洪水氾濫の危険がある区域に全人口の約半数が居住しているため社会的要因からも、治水対策が、重要な意義を持っている。
    このような自然的・社会的条件のもとにおいて、治水事業は、従前より一定限度の規模の洪水を対象としその氾濫の防止に必要な計画を策定して、これに基づき河川工事を実施するという方法により進められている。
    しかしながら、洪水は自然現象である降雨に起因するものである以上、極めて規模の大きな洪水、したがって計画の規模を上回る洪水が発生する可能性は、常に存在している。
    一方、東京、大阪、名古屋等の大都市地域は、その大部分が河川氾濫区域に位置し、水害の危険を内包している地域である。仮に、これらの地域を洪水から防御している大河川の堤防が破壊されたとすれば、当該地域に壊滅的な被害が発生し、ひいては我が国全体の経済社会活動に致命的な影響を与えることが懸念される。 特に、これらの地域は、近年、人口、資産の集中、さらには中枢機能等の集積の傾向がますます顕著になっており、将来にわたっても我が国の経済、文化等の中心としてふさわしい整備を図るべき地域となっているところから、仮に、計画の規模を上回る洪水、計画高水位を上回る洪水等が発生した場合においても、もはや破堤に伴う壊滅的な被害の発生は、許されない事態となっている。
    さらに、これらの大都市地域における都市整備の進展に併せて、時機を失せず、所要の対策を講じていくことが、緊要な課題となっている。
    河川審議会は、大都市地域の大河川において、計画高水位を上回る、又はそのおそれのある洪水すなわち超過洪水等に対して、破堤による壊滅的な被害を回避するための超過洪水対策及びその推進方策についての諸問題を審議した結果、下記のとおり答申する。
    なお、今後とも治水財源の確保に努め、引き続き治水施設の整備水準を質、量ともに向上させるようその促進を図ることとし、あわせて、超過洪水対策の推進を図るため、法制度の整備等も含め検討し、その充実に努める必要があることを特に付言する。


    新たに超過洪水対策として、高規格堤防の整備を強力に推進することとし、その整備区域が、都市域における親水空間、防災空間等として多様な機能を発揮し得ることにかんがみ、総合的に施策の効果を発現できるよう、施策の拡充を図るべきである。
    大都市地域の大河川において、超過洪水等に対して破堤による壊滅的な被害を回避するため、その主要な施策として、当該大河川の特定の一連区間において幅の広い高規格堤防の整備を進めるべきである。
    一方、特に近年、河川の持つ文化的価値が再認識され、水辺空間が、都市の生活環境にうるおいとやすらぎをもたらす貴重な空間として強く期待されている。また、過密な都市内における防災対策の一環として、安全な避難場所としての防災空間の確保が、緊急の課題となっている。
    高規格堤防の整備に当たっては、主要な整備区域が、都市の一画を形成しており、このような多種多様な要請に対応した多機能の都市空間としても期待できることにかんがみ、積極的に土地利用との調整に努めつつ、その整備を強力に推進すべきである。


    地域を洪水から防御するための新たな治水対策として、水防災対策特定地域を設定し、関連する施策を実現することについて、早急に検討を進め、その実現を図るべきである。
    通常の改修方法によらず、地域の選択により、土地の有効利用を図りつつ住宅等を洪水から防御するための水防災対策特定地域の設定を行うことを検討するべきである。
    この場合、超過洪水時の洪水及び当該地域の遊水機能についてあわせて検討すべきである。
    また、当該地域内における住宅等の新築等に当たっての配慮事項、既存住宅のかさ上げ等に対する助成、誘導等の関連する施策について検討を進めるべきである。


    超過洪水対策として、次の事項について調査研究し、その実施を極力推進するべきである。
    (1) 閉鎖型氾濫地域における土地利用及び建築方式の設定
    満潮位以下の地域等のような、破堤、氾濫した場合に地形的に氾濫水が河川に戻らず、あるいは拡散しない閉鎖型氾濫地域における激甚な被害を回避するための土地利用及び建築方式について調査研究を進めること。
    (2) 氾濫流の制御
    破堤、氾濫が生じた場合に被害を極力最小限にとどめるため、旧堤等の二線堤の保全、輪中堤の保全、道路等の一連区間の盛土の活用等による氾濫流の制御について調査研究を進めること。
    (3) 洪水氾濫時における警戒避難体制の強化
    破堤、氾濫が生じた場合に被害を極力最小限にとどめるため、洪水情報収集伝達体制の整備、洪水時避難地及び避難路の確保等について調査研究を進め、洪水氾濫時における警戒避難体制の強化を図ること。 また、あわせて、超過洪水発生時における水防の在り方についても調査研究を進めること。
    (4) その他
    超過洪水時における排水機場の運転方法の明確化を図るよう、必要な措置について調査研究を進めること。


    超過洪水対策を円滑に推進するためには、関係地域住民及び関係行政機関等の理解と協力を得ることが極めて重要である。このため、関係地域住民及び関係行政機関等に対し超過洪水対策及びこれに関連する情報等の周知徹底に努めるとともに、推進体制の整備、拡充を図るべきである。

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