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中和事業とは

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    河川の中和

    数多く流れる日本の河川のpHは、通常7.0前後(中性)です。しかし、その中には中性のものばかりではなく、酸性やアルカリ性の河川もあります。「河川の中和」では、酸性河川の中和事業を紹介します。

    日本の自然界で河川が酸性となる原因は、火山に由来する硫化イオンが、降雨で溶け出すことなどによります。

    そして、強い酸性の河川では

    『魚などの生物が生息できない』
    『河川の水が農作物や飲料に適さない』
    『鉄やコンクリートなどを用いた建造物の損傷が激しい』

    など、人間はもちろん、動植物など様々な方面への悪影響があります。

    そのために河川を中和することが必要となり、それぞれの場所に適した方法で中和に取り組んでいます。

    湯川の場合〜世界初の酸性河川の中和事業、甦った「死の川」〜

     湯釜と中和工場
    吾妻川はかつて、強い酸性の水が流れるために魚も棲めない「死の川」と呼ばれていました。そして、鉄やコンクリートを使った建造物が作れない、河川水が農業に適さないなど人間の生活にも多くの負担を強いていました。そこで、吾妻川に流入する酸性河川のひとつである湯川の水を中和して、川を甦らせようという取り組みが始まったのです。とめることのできない事業に適した中和材料を見つけることや、中和生成物をどう処理するかなど、たくさんの問題をひとつひとつ解決していったすえ、昭和39年に世界で初めての酸性河川中和事業がスタートしました。  その中和方法は、草津中和工場で湯川に石灰ミルクを投入し、その先に建設された品木ダムに流れ入るまでに徐々に進んでいくという仕組みです。  現在、吾妻川には魚などの生物が棲むようになり、下流の人々も中和された河川の水の恵みを受けて生活しています。そして、草津中和工場はこれからも24時間365日、湯川の中和を行っていきます。

    (1)白根山−火山活動が生み出す、草津の湯−

    湯釜

     「草津白根山」と呼ばれる白根山、本白根山、逢ノ峰のうち、白根山は那須火山帯に属する活火山です。山頂には、火山活動による硫黄成分が溶け出して酸性となった湖水をたたえる水釜、湯釜、涸釜の3つの火口湖があります。中央で美しいエメラルドグリーンの湖面を見せる湯釜のpHは1.2と非常に強い酸性になっています。そして、草津の湯もまた草津白根山という生きた火山の恵みなのです。  しかし、このまま下流に流れると、魚が棲めないなど、いろいろな問題もあります。

    (2)湯畑

    湯畑

     江戸時代には「草津千軒江戸構え」といわれるほど温泉客で賑わった草津。草津節に「お医者様でも草津の湯でも、惚れた病はなおしゃせぬよ」とあるように、草津の湯は恋の病以外ならどんな病も治すといわれていました。草津白根山という火山の影響を受けた草津の湯は非常に高い殺菌力をもち、開湯から1200年といわれる長い歴史の中で、多くの湯治客の病を癒してきました。その草津温泉の中心地にある湯畑の湯はpH2.08の強い酸性の上に55度という熱さです。ここは年4回「湯の花」の採取が行われることでも有名です。「湯の花」は源泉が自然の空気に触れることで少しずつできる天然の入浴剤です。草津の地は火山の恵みを受け、余すことなく活用してきました。  しかしその一方で、強い酸性のまま下流に流れていくと、魚などの生物が生息できなくなったり、コンクリートや鉄を使った建造物が作れない、水が人の生活や農業に適さないなど多くの悪影響が出てしまいます。そのため、昭和39年から世界に先がけて中和事業が行われているのです。

    (3)草津中和工場

    タンクローリー

     草津中和工場は湯川の水を中和しています。中和に用いるのは群馬県内で採れる石灰です。中和事業は止めることができないため、安定した供給が見込まれる石灰は中和の材料として適しているのです。  石灰石を湯川の水に溶けやすい大きさ(75マイクロメートル)に粉砕した石灰石粉(タンカルと呼ばれる)は、毎日タンクローリーで運ばれてきます。1日の石灰石粉使用量は約52.5トン、年間使用量は約1万8,000トンにのぼります。

    中和工場

     運ばれてきた石灰石粉は一度サイロに貯蔵されます。石灰石粉の使用量は毎日のpH測定によって決定します。サイロは3台あり、順番に稼動しています。

    中和剤投入

     サイロから落下した石灰石紛は用水管に引き込んだ河川水と混ざって濃度14〜15%の中和剤となります。これを湯川の上に設置された投入口から自然に投下します。

    中央管理室

     河川の中和事業は止めることができません。中央管理室で24時間365日、中和が円滑に行われるように監視しています。

    中和のしくみ

    (4)湯川から品木ダムへ

    中和剤投入後

     中和剤が投入された湯川の水は白く濁って流れて行きます。そして、下流に作られた品木ダムへ流入するまでの約3kmの間に中和反応はゆっくりと進み、品木ダムに入る頃pH5.5程度になります。

    品木ダム

     品木ダムは上州湯の湖とも呼ばれて親しまれています。ここは中和反応の促進と中和生成物の収容を行う中和緩衝池の機能を持っています。また、ダムの水は発電にも用いられています。

    浚渫

     品木ダムには、草津中和工場で投入された石灰石粉の成分である「炭酸カルシウム」と湯川の酸性成分である「硫酸、塩酸」との中和反応によって生じる「硫酸カルシウムと塩化カルシウム」という中和生成物が沈殿・堆積します。そのほか河川からの流入土砂もあるため、定期的に浚渫が行われています。浚渫物は脱水し、環境に配慮した土捨て場に運ばれます。

    (5)海へ

    利根川

     品木ダムから流れ出た水は利根川の一大支川である吾妻川に流入します。現在の吾妻川には湯川などの中和によって魚などの生物が棲めるようになっています。吾妻川はその後利根川に合流し、やがて太平洋に流れ着きます。  白根山で生まれた湯川の酸性の水は、温泉として人々を癒し、中和された後は近隣の人々のみならず、様々な形で下流に住む人やその他の生物と深く関わりあいながらその旅を終えるのです。

国土交通省 関東地方整備局 品木ダム水質管理所
〒377-1711 群馬県吾妻郡草津町大字草津604-1 TEL:0279(88)5677