【小学校の部・総評】
今年の応募は、広報のタイミングの影響などもあり、若干減ってしまったようですが、その影響も多少はあったのでしょうか、ここ数年の傾向でもあるのですが、人物、例えば家族や友だちなどの身近な人の写った作品が少なかったことは残念でした。また、経験という眼鏡で曇ってきがちな大人の眼にはとても新鮮な、小学生らしい素直な感動や驚き、発見、好奇心、そういうものが写った作品も少なめだったように思います。そんな中で上位に選ばれた作品は、どれもが、そういうものをしっかりと備えた、素直な感動や驚きに導かれた作品となりました。
金賞の「たきをみつけた!!」や銀賞の「こんなにつれたよ!ザリガニつり」銅賞の「すずしくなる方法」「身近にある自然」「夏のしあわせ」どの作品にも人=家族などの身近な人とその感動が写り、そして、川や川との関係もしっかりと画面に写ってきている秀作揃いでした。一方、「夜明けの梓川」や「千波湖と白鳥」「今は平和なのか」などの作品は、大人びた美意識や考察を感じさせて、小学生、侮り難し!という思いも抱かせてくれました。来年もまた、沢山の応募を楽しみに待っています。
審査員 島田 聡
受賞コメント
かぞくでなんどもいったことがある、きよ川村のたにたろう川。2さいのいもうとがはじめて川の中にはいることができました。つめたい水で、とてもきれいな川です。小さなたきをみつけることができました。この川にまたあそびにいきたいです。
審査員(島田先生)コメント
子どもの頃、華厳滝や白糸の滝のような有名で立派な滝でなくても、この作品のように、ただ垂直に流れ落ちる水の流れのことを、全て「滝」と称して、それを見つけた時には、大はしゃぎしていた記憶があります。写っているのは妹でしょうか、その喜びがとても伝わってくる、実に微笑ましい一枚ですね。更に、背景の透き通った川の流れ、緑、苔むした岩の姿、どれもが清流の様子と美しさを余す所無く伝えて、小さな発見と探検に輝きを添えています。
受賞コメント
今回は、銀賞にえらんでいただき、ありがとうございます。私たち姉弟の夏の楽しみは、ザリガニつりです。ザリガニがたくさんつれて、弟が喜んでいるところを写真におさめることができました。
審査員(島田先生)コメント
この作品も、子どもの頃の興奮を思い出させてくれる、そしてその興奮と喜びと感動が伝わってくる一枚ですね。その昔、生き物はうじゃうじゃ居て、ざくざくと獲れたものです。山奥では無さそうですが、こんな場所がまだ身近そうな所に残っているのですね。生き物たちを豊かに育む川への愛情や感謝を感じさせてくれて、更には、その姿を保つことへのメッセージにもなっていると思います。
受賞コメント
夏に、大阪の道頓堀で観光をした際に、家族で場所を選んで撮影しました。
審査員(島田先生)コメント
打って変わって自然とは程遠い都会の川の姿ですが、これもまた私たちの川、身近な川の姿でもあります。「川」という直球でシンプルなタイトルも、それを物語っています。そんな都会の川の中でも、一番といっていいくらい象徴的な道頓堀川を、橋の真ん中に立ち、正面から捉えた正攻法が、その出会いの感動を伝えてくれています。微妙な傾きを嫌がる人もいますが、ここでは、その微妙な傾きも、動きの無い静かな画面に、動きや変化の予兆をほのめかすささやきになっているように思えます
受賞コメント
旅行でいった上高地。早起きして散歩をしていると、日が昇ってくるにつれてどんどん様子が変わっていくのがきれいで写真をとりました。
審査員(島田先生)コメント
一幅の墨絵のような、実に渋くて素晴らしい作品です。言ってみればとても大人びた感性にも思えるのですが、さすが五年生ともなると、こういう風景の素晴らしさに心が動き、また、それを定着させることができるのですね。夜明けの撮影となると、偶然というより、狙いに行った、ということなのでしょうか。そうだとしたら、これにも脱帽です。
受賞コメント
銅賞に選ばれて、とてもうれしかったです。この写真は、ぼくの町の千波湖でとったものです。昼間とは違う静かな千波湖で、白鳥と水にうつった町のあかりがきれいでした。そのときの様子がうまくとれたと思います。
審査員(島田先生)コメント
こちらもまた実に渋い作品です。水戸の千波湖は白鳥が飛来することで有名だそうですが、その白鳥がシルエットで夕景の湖面に浮かんで、とてもロマンチックな一枚になっています。白鳥を真ん中ではなくて、画面右の方へ、梢を画面右上に配した構図も、湖面と灯り、夕暮れの空を引き立てています。惜しいのは、画面下の暗い部分がちょっと多いことです。このシャドウが今の半分くらいになるように、カメラを上に振り、雲模様が魅力的な空をもっと入れると一層良くなったと思います。
受賞コメント
入賞とてもうれしいです、ありがとうございます。水しぶきをうまくとるのが難しかったです。
審査員(島田先生)コメント
タイトルが良いですね。確かにこうして遊んだら、とても涼しくなりそうです。その涼しさ感が、逆光に映える水しぶきと、嬉しそうに嫌がっている女の子の姿と表情に、気持ち良く表れています。露出アンダーで暗くなりがちな逆光ですが、補正したのでしょうか、画面が暗くならず、人の表情や姿、岩肌の表情もよく見え、光の向こうは眩しさが際立ち、とても爽やかな作品になっています。
受賞コメント
私の住んでいる町を流れている「富士川」と、大好きな妹の笑顔がすてきな写真が撮れました。夏の日の大切な思い出です。
審査員(島田先生)コメント
妹でしょうか、かわいい笑顔に目が行ってしまいますが、タイトルは「身近な自然」、そう、富士川町に住んでいて、その富士川を撮っているのですよね。その証拠に、女の子を、そうなりがちな画面の真ん中ではなくて、その川がよく見えるように画面の左に配しています。こんな川が身近にあって羨ましい、可愛い妹がいて羨ましい、そんな二つの愛情が伝わってくる作品です。
受賞コメント
念願だった一眼レフを買ってもらいました。うれしくてたくさんとっているうちに、思い出の瞬間を写真におさめることに夢中になりました。それに、川や水の美しさにも感動しました。大切な水と家族の思い出を重ねることができました。
審査員(島田先生)コメント
こちらもタイトルが良いですね。タイトルが良いというのは、何を撮りたいか、何に感動したのか、その対象と狙いが明確だからこそなのです。これらが漠然としていると、やはり写真もタイトルも漠然としてしまって、作者の思いは伝わりにくいのですよね。この作品はそれが明確です。夏ならではの水遊びの一コマ、おじいちゃんの幸せと孫の幸せ、二つの幸せが画面に、そして、この写真を見る者にも、幸せを与えてくれる一枚です。
受賞コメント
「とうろうながし」という絵本を読んで、広島に原爆が落とされてたくさんの人が亡くなったと知りました。今でも核兵器を持っている国があり、もし、またそれが使われたら…、と思うととても怖いです。
審査員(島田先生)コメント
どうでしょう、タイトルのこの堂々とした問いかけ。きれいな風景、嬉しい一瞬、可愛い笑顔、そういった感動を伝えるものとは違う、写真の持つ力を教えてくれる作品です。背景の原爆ドーム、何を語らうのか、何を想うのか、想像させてくれる二人の大人の後ろ姿、どれもが問いかけであり、答えではありません。のどかそうでも、肌寒そうな春の日の風景、姿勢と襟を正したくなる緊張感を感じる作品です。