かわづくり
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わたらせ川を知ろう
川と私たちの生活
民話
渡良瀬川は、遠い昔から私たちとかかわりあっていました。
飲み水や水田、 舟運 ( しゅううん ) などに利用され、私たちの生活を支えたり、水とふれあうことのできる大切な“ふるさとの川”であると同時に、洪水などによって 多大 ( ただい ) な 被害 ( ひがい ) ももたらしてきました。
こうした水との長い間のかかわり合いから、川にまつわる民話も多く生まれました。
日光市足尾町に伝わる「渡良瀬川という名のおこり」、太田市に伝わる「ダイダラボッチ」足利市に伝わる「 竜神 ( りゅうじん ) 様のくれた 膳 ( ぜん ) と 椀 ( わん ) 」など、川と人々のかかわりを、今に伝える物語がたくさん残っています。生活の工夫
川からの恵みと同時に洪水の被害を受けていた昔の人々はいろいろな工夫をしていました。
【 水 塚 ( みずか ) 】
利根川と渡良瀬川にはさまれた 地域 ( ちいき ) では、昔から洪水などに悩まされてきました。
そこで、水害から命や 財産 ( ざいさん ) を守るために、 緊急用 ( きんきゅうよう ) の物資や米・みそ・ 衣類 ( いるい ) などをおさめておく「水塚」と呼ばれる 土台 ( どだい ) を高くした小屋がつくられました。
いったん洪水が起こると、水がひくまで人々は長い間、水塚に 避難 ( ひなん ) していなければならないことが多く、 建物 ( たてもの ) 内には避難生活に必要な 日用品 ( にちようひん ) などもおかれていました。
【 揚 舟 ( あげぶね ) 】
揚舟は、ふだんは家の 軒下 ( のきした ) などにつるしておき、水害時に人や家畜、食料などを水塚へ運んだり、近くの高台へ運んだりしました。
竜神様 ( りゅうじんさま ) のくれた 膳 ( ぜん ) と 椀 ( わん )
今の足利市の八幡神社近くに、深い 淵 ( ふち ) がありました。
あまりにも深い淵のため、 竜神様 ( りゅうじんさま ) が住んでいると信じられていました。
前の年の大洪水で、家や着物まで流されてしまったこの村では、祭りの時に神様にお 供 ( そな ) えをするためのお 膳 ( ぜん ) やお 椀 ( わん ) もありませんでした。
そこで村の人々は、淵の水神様である竜神様にお膳やお椀を 貸 ( か ) してもらおうと、心をこめてお 祈 ( いの ) りしました。
すると、その 翌朝 ( よくあさ ) 、りっぱなお膳とお椀が淵のそばに 並 ( なら ) べられていました。
無事 ( ぶじ ) お祭りを済ませることができた村人たちは、また淵に返しておきました。
それからというもの、村祭りのお膳とお椀は必ず、この淵で竜神様から 借 ( か ) りて使うようになりました。
ところが、ある年の祭り当番の男がとても 欲 ( よく ) が深く用具の一部を返しませんでした。
川は 怒 ( いか ) り大洪水となって、その男の家も流されてしまいました。それ以来、いくら村人たちがお祈りしても、竜神様はお膳やお椀を貸してはくれなくなってしまったそうです。