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特別公演 |
| 「美しい国土づくり」に向けて |
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谷口 博昭(国土交通省技監) 和歌山県出身。昭和47年東京大学卒業後、47年建設省入省。 平成10年建設省道路局高速国道課長、11年道路局企画課長、 14年近畿地方整備局長、16年道路局長を歴任。平成18年7月より現職に就任。 |
■価値観の共有が先決 内閣府の国民生活に関する世論調査では、昭和47年には物質的な豊かさを重要視している国民が約40%、心の豊かさに重きを置く国民が約35%だった。それが、平成17年にはそれぞれ約28%、約58%と物質面の充足度は一定のレベルまで達したように思う。 アメリカやEUなどは、既に国を挙げて新しい世紀のインフラを整備してきた。 日本の新しいインフラ整備には、既存ストックの活用、再生を含めて、国と地方、官と民、公と私がパートナーシップを結び、価値観を共有することが先決だ。 また、今までの取り組みを強化したい。行政は支援という立場で、多様な主体、住民、NPO、企業、団体の方々が参加しやすい場を提供しコミュニケーションを図ることや、観光を中心とした地域づくりを推進していくための事業の展開していく必要がある。また自然再生推進法の精神に配慮した環境整備や個性を活かした景観づくりができればいいと思う。 今後の「美しい国土づくり」は面的に広げていく。ヨーロッパは広場の文化、日本には道の文化がある。「日本風景街道」「道の駅」などを生かし、パートナーシップで地域を一体化し融合化していくことが重要である。
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基調講演 |
| 美しい国土づくりと関東の可能性 |
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川勝 平太(静岡文化芸術大学学長) 京都府出身。学士(早稲田大学政治経済学部)、修士(同大学院)、 D.Phil.(オックスフォード大学)。早稲田大学教授などを経て、平成19年4月より現職。 専門は比較経済史。国土審議会委員をはじめ要職を務める。 |
■「暮らし」が景観つくる 国は、軍事力、経済力、文化力を体系的に整備しなければならない。 日本は、戦前は軍事力、戦後は経済力に力点を置いて「強い国」づくりにまい進した。「美しい国」づくりには、強さを背景にしつつ文化力を高めねばならない。 「文化」とは暮らしの立て方のことだ。暮らしの場が景観をつくる。暮らし方と景観とが魅力的になると、文化力は高まる。 人間の手と心の入った景観は「文化的景観」と呼ばれる。関東の文化的景観の基礎は「平野」だ。北海道・東北は「森林」、中部は「山岳」、瀬戸内海を囲む西日本は「海域」だ。 関東は西洋文明の受容の中心であり、西洋文明の生きた博物館になっている。関東平野の魅力をさらに高めるには環状道路の整備が不可欠だ。内外のネットワークを密にするには成田・羽田空港のハブ化、モノの流通効率をあげるには東京湾の諸港が一体的に連携した「東京湾港」化が必要だ。 新しい首都候補地になっている那須野ケ原は、関東の「野」から東北の「森」に入る境目にあるから、イメージは「鎮守の森の都」である。 関東の「野」の魅力の向上は、東北・北海道の「森」、中部の「山」、西日本の「海」の文化的景観の魅力を際立たせる。 暮らしと景観の魅力が高まると、日本列島は美しい「ガーデンアイランズ」になるだろう。
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パネルディスカッション |
| 美しい国土を支えるインフラとはなにか |
| ●パネリスト |
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中村 英夫(武蔵工業大学学長) 東京大学工学部土木工学科卒業、工学博士。 東京大学生産技術研究所助教授、シュツットガルト大学客員教授、 東京工業大学助教授などを歴任し、現在、武蔵工業大学学長。東京大学名誉教授。 |
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山本 善一(関東建設青年会議会長) 神奈川県出身。昭和54年東海大学工学部入学、58年大岩産業(株)入社。 60年(株)山善入社、現在は代表取締役。 社団法人神奈川県建設業協会理事、神奈川県森林土木建設業協会理事などを歴任。 |
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木場 弘子(キャスター、千葉大学教育学部特命教授) 千葉県出身。千葉大学を卒業後、TBSにアナウンサーとして入社。 結婚を機にフリーとなり、現在は妻、母、キャスターの三役をこなす。 国土交通省交通政策審議会環境部会の臨時委員などを務める。 |
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中島 威夫(国土交通省関東地方整備局長) 東京都出身。昭和50年東京大学大学院修了、50年建設省入省。 平成13年国土交通省国土技術政策総合研究所企画部長、 16年総合政策局技術調査官、17年大臣官房技術審議官を歴任。18年7月より現職。 | |
| ●コーディネーター |
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鎌田 司(共同通信社編集委員兼論説委員) 建設省(現国土交通省)、自治省(現総務省)など主に行政取材に携わる。 内閣府の道州制ビジョン懇談会メンバー。 共著に「広域地方政府システムの提言」「フランスの地方分権改革」など。 | |
景観の品格を意識して/中村 地元への愛情・愛着を/木場 地域に融合する工法/山本 後世に残せる国づくり/中島
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鎌田/「美しい国土づくり」と聞いて、何を思い描くか。 中村/日本列島は、険しい山、入り込んだ海が多く平地の少ない過酷な土地である一方、大変美しい自然を持っている。ところが、今、看板、電柱の林立するまちは極めて不統一だ。 絵はがきでも、日本の場合は、富士山や岩木山の景色だけで、近景の人工物は全く入らない。そんな経済効率最優先だった我が国も、電線の地中化など、国土やインフラの品格を気にする社会に変化してきた。トヨタやソニーの製品のように、美しく安全で信頼性の高いジャパンブランドのインフラをつくる時代が来たと思う。 木場/美しい国土は、景観的な見た目の美しさだけでなく、人々が優しい気持ちを持ち豊かな生活ができる環境でなければ、生命は宿らない。その土地への愛情、愛着を持つことがキーワードだ。 山本/建設業は、橋やビル、トンネルなど、大きいプロジェクトに目がいきがちだが、それだけではない。阪神・淡路大震災のときは、業界挙げて社会貢献活動に励んでいる。以前は、コストと機能を重視し、緑豊かな山奥のせきに生コンクリートを流し込むなどの自然に融合しない工法が多かった。しかし、現在は自然環境を大切にし、自然と地域に融合する工法が取り入れられている。 中島/江戸時代、日本を訪れた外国人は自然景観の美しさを絶賛し、街道の広さ、松並木のきれいさ、人々のマナーを評価していた。沿道の人たちも雨でぬかるんだ道に砂を入れて、それを防いでくれる。そんな「未知普請」が成り立っていた。 鎌田/「美しい国土づくり」に向けた具体的な事例は。 中島/戦国時代には、自然の流れを利用した信玄堤が甲府盆地を水害から守った。また、明治時代には、荒川放水路の建設により、治水を行うと同時に新たな美しい景観が生まれた。 看板の乱立や不法投棄などで景観が損なわれている今、まちの再生に向け、川のゴミ集めなど官と市民が一緒に取り組むようになった。また松本市は松本城の景観を守るため、周囲に高さの制限をかけるなど、美しい景観をつくるには合意をとりながら規制を入れていくことが大事。一方で いいものを残そうと「富士見百景」という取り組みも行っている。 山本/我々の業界は3K、5Kといわれ、若年層の建設業離れが進み、慢性的な技術者不足だが、我々には100メートルの橋や道路を誤差1、2センチでつくる技術がある。この世界に誇れる技術力を業界の仲間らとPRしていきたい。 木場/メッセージは相手に伝わらなければ意味がない。お手洗いのマークが分かりづらいおしゃれなホテルも困るし、逆に、最近のテレビ画面には文字情報が多過ぎて読みきれない。 また、最近、国交省の道路工事看板標識が変わった。例えば『水道の工事をしています』などと大きな文字で書かれており、非常に分かりやすい。このような工夫が大切だ。 中村/まちづくりや国づくりは時間のかかるものだ。日本橋などの大プロジェクトはもちろん、もっと小さなものでも品格が必要だと思う。例えば、「私のお家もみんなの景色」という小学生が作った標語があるが、たとえ個人の家でもその景観は公共のものだという意識を持つべきだ。 鎌田/未来に伝えていく美しい国土づくりとは。 山本/例えば高速道路のサービスエリアにドライブシアターをつくり、利用者が楽しめるスペースとして使えるようにするなどの利便性も美しさの一つだ。建設産業界の若い仲間と一緒に公共事業を支え、地域の声を聞き、「美しい国土づくり」へのプライドと責任を持っていきたい。 木場/学生に「あなたの地元の自慢話をして」と聞いても、皆地元のことをよく知らない。地元への愛着をもっと大切にしてほしい。 また、社会整備の部分では、地域全体で冷暖房するとCO2を出しにくいとか、環境に配慮する視点も「美しい国土づくり」に入れてほしい。 中村/日本は中国や韓国、ベトナムに比べて桁違いに自然が美しい。映画のセットのような宿場町を復元するよりも、日常生活が美しくなる国づくりをぜひ皆でやっていきたい。 中島/観光というのは国の光を示す。住んでいる人たちが誇りを持って、いいまちなんだよ、きれいな自然があるんだよと後世の子どもたちに残していくことが「美しい国土づくり」には重要だ。
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※掲載にあたり、出席者などの敬称はすべて省略させていただきました。 |