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    伝統河川工法

    雁堤の治水技術の検証

    図一10.雁峠の治水効果の検証の図 図一10.雁峠の治水効果の検証の図岩本山の付近 ※1

     なぜ「雁堤」は鳥が飛翔する形になっているか、図一10は雁堤が秘めている治水技術を検証するために計画高水流量相当で山梨大学工学部の実験した結果です。この図から岩本の出しと備前堤の効果によって土砂を堆積させることなく主流を河心に向けさせる事が分かります。雁堤の形、備前堤の角度、岩本の亀甲出し等は、実に理に適った治水効果のある配置になっていたのだと感心させられます。(図-9を参照)
     忘れてならないのは悲しくも敬虔な護所神社の由緒です。「雁堤」の築造の時に、堤防を築いても築いても壊れてしまいました。そこで富士川を渡って来た1OOO人目の人に「人柱」になってもらったところ、堤防は壊れなくなり完成したというのです。この「人柱」になって下さった人の霊を慰め感謝するために護所神社は祀られているのです。
      近年調査で分かったことですが、この辺りには活断層の富士川断層があり約150年の間隔で活動し、垂直方向に150cmの変位を起こきせます。大正12年(1937)の関東大震災の時もここで堤防の崩落があったと甲府河川国道事務所の工務報告には記録されています。

    ※1:雁堤が山付になる岩本山の付近、この付近に一番出し・二番出し・三番出しが造られている。

    おわりに

     皆様とご一緒に富士川の至宝とも言うべき「信玄堤」「万カ林」「雁堤」を見てまいりました。富士川の流域に住んだ私たちの先祖が心血を注いだこれらの施設は、現在でも洪水を制御し氾濫を防いでくれています。しかし、普段は眠れる如く寡黙です。
     富士川も長い歴史を手本にしながら新たな時代に即した治水の在り方を求めて進んでいくことになるはずです。皆様にも折に触れて富士川を尋ねていただき、気が付いたご意見や感想、提言を戴ければ有難いと思います。
     今日はご苦労さまでした。

    《参考文献、資料》

    1.信玄堤…国土交通省甲府河川国道事務所
    2.歴史的治水施般の水理学的評価
    -笛吹川万力林の水富防備機能について-
                  山梨大学工学部研究報告No39 1988
                                    砂田憲吾  他
    3.富士川水系における歴史的治水施設の水理学的評価
    -雁堤の場合-
                  土木学会第45回年次学術講演会
                           山梨大学工学部 伊藤強 他
    4.山梨県地名大辞典…角川書店
    5.堤防溝洫詩…佐藤信有(淵)
    6.甲斐の道づくり・富士川の治水-歴史資料集-
                  「今に冠たる信玄堤」 国土交通省甲府河川国道事務所
    7.富士川における地震断層への対応
                   昭和55年 関東地方建設局技術発表資料
    8.日本の川-白然と民族IV-
                  「富士川」 信公論社 平成元年
                                        望月誠一
    9.山梨郷土史年表 …山梨日日新聞社 山梨郷土研究会編
    10.甲斐国志 …従五位下 伊予守 松平定能

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