かわづくり
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伝統的治水施設の保全と整備
伝統河川工法
現在の雁堤を見る
雁堤は富士川が山間部から富士平野に出た所に築かれています。富士川の計画高水流量 はここでは16600m3/s、河床勾配は1/230となっています。この流量は実に我が国で第3位 にランクされる規模です。雁堤には膨大な大洪水の流量を安全に川の中で流す工夫が随所にあります。未だに私達が気の付かない工夫がもっと有るかも知れませんが順を追って現在の姿を見ていきましょう。
雁堤は幾つかの構造物と自然地物の総合体なのです。これを大きく分けると
1,堤防 2,出し水制 3,牛枠水制 4,自然地物
の4つになります。図一9が雁堤の現況です。この図を参照しながら説明を見て下さい。
先ず堤防ですが(1)は雁堤の本堤で、(2)は90間堤防と言われる導流堤です。次は出し水制ですが、構造的に亀甲出しに属するものです。(3)が新1番出し、(4)が1番出し、(5)は2番出し(6)が3番出しです。構造的に土堤出しに属するものとしては(7)の備前堤、(8)の新備前堤、(9)の柳堤があります。次に牛枠水制ですが(10)がコンクリート中聖牛が敷設してあります。次に治水効果を積極的に期待した自然地物としては(11)の岩本山の岩、(12)の水神の岩、そして対岸の(13)が尼が淵です。さらに雁堤が治水の守護として地元の人々から絶対に信頼され敬慶の念をもって崇められている根源として鎮座しているのが(14)の護所神社と(15)の水神社です。
この雁堤は駿河藩の代官も務めた事のある地元の豪族・古郡氏の三代にわたり、50余年の歳月と膨大な経費、そして治水の知恵と工夫を結集して江戸時代の初期に築造されたものです。
※昭和57年8月、台風10号による洪水で東海道本線が落橋する被害が発生しました。
また、この時雁堤に洪水が一部湛水しました。